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Interview

世界初・世界最速を実現するイメージセンサーの開発。
背景にあるのは人に聞く力&チーム編成力だった

電気・電子系エンジニア

田中 剛

アナログ→デジタルの橋渡し。ほんのちょっとの電力のブレも許されない、超センシティブな世界です

エンジニア略歴

  • 1996年新卒入社
  • 1996年~通信用ICの設計・評価
  • 2008年~地上波アナログ・デジタルチューナーICの設計・評価
    BS、CSチューナーICの設計
  • 2010年~スマートフォン向けBluetooth、WLAN(Wi-Fi)、Wimax評価
  • 2012年~CMOSイメージセンサーのアナログ回路設計

体育教師を目指していた。
氷河期の壁にぶつかり、電気の世界へ

世界水準の製品、技術に関わるために技術知識は必須。しかし、同時に「人に聞く力」と「チームづくり」の大切さを語る、それが今回登場する田中さんだ。

「元々、体育教師を目指していました」学生の頃から始めて社会人になっても続けたバレーボールで、優れた指導者に出会い、強いチームをつくるために人の動かし方やチームのつくり方などを学んだ。

「体育教師を目指すも、就職氷河期の真っただ中で求人もあまりない時代。教師の道は難しいと考え、物理や数学など理数系が好きだったことから電子工学科へ進学することに。電気電子の領域なら仕事があるだろう、と考えたのがエンジニアとしての出発点だったのです」

就職活動では、Windows95の登場に世界が沸き立つ中、PCメーカーか関連企業への入社を希望した。しかし、就職環境の悪化は深刻で不採用通知が相次ぐ。4年次も秋となる中、まだ採用を行っていたメイテックのことを同級生から聞き、応募して内定を獲得する。当時は派遣エンジニアの働き方も知らず、希望よりも不安の方が大きかったが、大手企業への配属もあること、そして「駄目だったら次を探そう」という気持ちで、メイテックへの入社を決めた。

評価を5年。知識を蓄え、
設計をしたいと直談判した

「最初に配属されたのは、世界的なエレクトロニクスメーカーの開発部門です。当時最先端となるデジタルの携帯電話が出始めた時期に、その通信用ICの業務に携わることができたのは幸運でした」

業務ではアナログの電波を受信してデジタル信号に変換する、ダウンコンバートやアップコンバート、ICの評価で自動測定プログラムの作成などを担当した。

「最初は評価業務からでした。試作品が規準の性能を満たしているか、作業手順に沿って多面的に確認しますが、期待通りの結果が出ない場合もあります。そんな時は原因を予測し、可能な限りの改善案を提案するよう心掛けました。また、分からないことは放置せず、下調べをしっかりした上で周囲に積極的に聞き、知識量を増やしていきました」

評価業務も5年目となり、スキルアップのために職場の上司に「設計をやらせてください」と直談判し、承認された。

「お客さまには、同期で入社した社員のエンジニアがいました。彼は私より先に設計の仕事を任されていたので、その成長を横で見て、積極的にコミュニケーションを取りながら設計業務の概要を学びました」

評価から設計と業務内容が変化し、契約は12年間継続した。次は同じお客さまの別部署で、最先端のBS、 CS用チューナーのIC設計に携わることに。ここでの経験は、田中さんが自身のコア技術と考える、高周波に関する知識を育てる期間となった。

スマートフォンの分野で知った、
現実に起こる課題の多さと複雑さ

「チューナーの業務が終了した時、イメージセンサーの仕事に誘っていただきましたが、次は経験の無い最終製品の開発に携わり、スキルアップしたいと考え、スマートフォンのセットメーカーへ配属してもらいました」

業務は携帯電話に搭載されるBluetoothとWi-Fiの評価が中心。千差万別の状況で使用される製品が、常に安定した通信環境にあるか確認する業務は非常に複雑だった。エンドユーザーからの 「電波が届かない」というクレーム対応も行うことがあり、セットメーカーの業務の難しさを知った。

「ある時、職場の上司から認証取得に向けて、世界各国の試験方法を調べてレポートしてほしいという要望がありました。これまでの業務で得た高周波に関する知識を生かして報告書をまとめたところ、『さすがメイテックのエンジニアはすごいね』との評価をいただきました。この配属先では新しい経験を積めて、自分が関わった製品を街の電気店で見ることができるという、エンジニアとしての喜びを知ることもできました」

この業務が終わると、1社目のお客さまから引き合いがくる。ハイエンド用途のデジタルカメラ向けCMOSイメージセンサーのアナログ回路設計だ。そして田中さんは、新たに受託という業務形態で、世界初、世界最速となる製品を生み出し続けるお客さまに、アウトプットを提供していくことになる。

チームの力を最大化して
世界最高レベルの技術を生み出す

カメラのレンズがアナログの光を捉え、その光を電子に変えるために必要なのが、CMOSイメージセンサーだ。田中さんのチームが担当するハイエンド製品の最新シャッター方式では、1枚の写真のための画像を同時に取得するため、多数のアナログ回路で同時にRGB変換が行われる。電力供給一つとっても、画質に影響するわずかなブレも許されない、極限的にセンシティブな世界だ。

「アナログからデジタルへの変換という意味では、最初の配属先と共通する技術要素は多いです。しかし、受託業務の難しさは技術面もさることながら、チームを動かして一つのアウトプットにしていくことです。技術力も性格も濃淡のあるメンバーの能力をフルに活用して、お客さまの満足するアウトプットを出すのは簡単なことではありません」

さらに、今年は2名のベテランエンジニアが派遣契約に切り替わり、お客さまサイドで動くようになった。人員の補充はあったが、開発業務が未経験な人もいて、育成しながら戦力化していくチームづくりがより重要なミッションとなっている。

「より効率的な動きを実現するためのコミュニケーション設計も行っています。例えば、試行錯誤の過程は有意義ですが、仲間に聞けばすぐに解決することもありますから、先輩と後輩が横になるようデスクのレイアウトを変更しています。他にも、一人一人に合わせた情報の伝え方、仕事の振り方も必要です。私自身が人に積極的に聞きながら育ってきたので、人に聞きやすい、教え合う受託チームづくりを心掛けています」

組織マネジメントに関するビジネス書を読み、自身の知識も強化してきた。学生時代に体育教師を目指すきっかけになった指導者の言葉を思い出すことも多い。

「今の目標は派遣と受託で連携して、お客さまの更なる信頼を獲得し、ハイエンドの業務をすべてメイテックで獲得することです。将来的には、新しい技術や製品にチャレンジしたいという思いもありますので、今後は自分が培ってきた技術、知識を受け継いでくれる、リーダーを育成していきたいですね」

チームを動かす人間力あればこそ、達成される技術領域があると断言する。世界最高クラスの製品開発を支える技術の担い手だ。


※当社社内報「SYORYU」:2024年秋発刊号に掲載した記事です

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