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Interview

評価のエキスパートから
組み込み系の開発へ
英語力を切り口にして
機会を広げた

マイコン・システム系エンジニア

伊吉 邦章

ベトナムにある開発チームと毎日英語でコミュニケーションしながら仕事を進めています

エンジニア略歴

  • 2005年新卒入社
  • 2005年~パソコンの評価業務
  • 2019年~ECUソフトウェアの評価業務
  • 2023年~自動車用パーキングセンサーのシステム開発およびマネジメント業務補佐

出遅れた就職活動。
組み込み系を目標に入社

メイテックのエンジニアにとって、フェーズアップは常に大きな課題。技術だけでは乗り越えられない壁に悩む人もいるかもしれない。今回は、そんな人のヒントになる話。英語を切り口に新しい場所を得た伊吉さんを紹介する。

修士課程ではアルゴリズムの研究をした。C言語やJAVAによるプログラミングを学び、オブジェクト指向にも触れた。研究テーマは「類似画像の検索」。

「点の集合を画像認識して、比較検討するアルゴリズム構築を行いました」

とはいえ学生時代のシステムやプログラミングに関する取り組みは、ゲーム好きの延長線上に過ぎなかったと振り返る。職業に関するイメージも明確ではなく、当初はソフトウェア関係という幅広い目標に向けて就職活動を進めていった。

「就職氷河期と呼ばれた時期は一段落していたものの、厳しい状況。なかなか内定がもらえずに苦しみました」

苦境の中で、遅ればせながらも少しずつ「やりたいこと」が見えてきた。それが「組み込み系」。

「家電や自動車に組み込まれたコンピューターをシステムとして制御する。携わる製品のイメージもつかみやすく、ここから設計・開発業務に興味を持つようになりました」

しかし、スタートの遅れが尾を引いた。組み込み系に就職活動のターゲットを絞ったころには、もはや後半戦、大手メーカーは採用を締め切った後だった。その中で発見したのがメイテック。採用メディアに掲載された情報に「組み込み系」の文字を発見し、差し当たってキャリアの第一歩として入社を決めた。

評価業務からのスタート。
現在と未来のために英語を学んだ

最初のお客さま先は外資系のパソコンメーカーだった。ここで携わったのが、開発中製品の評価業務。主にBIOS(Basic Input/Output
System)制御に関連する機能をまとめてレポートし、問題が見つかった場合には、発生状況、制限手順を詳細にまとめて報告する。
「例えばWindowsパソコンの場合、スリープ後にキーやマウスを操作することでシステムが復帰しますが、そのままフリーズしてしまうこともあります。原因はOSだったりBIOSだったりするのですが、再現性をまとめて、更新プログラムの作成資料にしていきます」

この場所で伊吉さんは13年間継続。お客さまに評価されたことを問うと、じっくり考えてこう話す。

「強いて言えば、愚直にやるべき業務と向き合い続けた点でしょうか。後半になると、単にエラーの有無だけではなく、その周辺にある状況もできるだけ伝わる報告書づくりを心掛けました」

職場で利用するコンパクトなプログラムを自ら進んでVB(ヴィジュアルベーシック)で作成するなど開発業務の基礎能力も向上させた。さらに、当時の業務にも将来にも役立つものとして、英語学習を自ら始めた。

「全世界に展開する多国籍企業で、職場にはインターナショナルなメンバーが何人もいました。社内文書も英語のものが多く、技術的な話は専門用語の羅列や手書きで用が足りましたが、日常会話をマスターしてより深いコミュニケーションができればいいなと考えました」

自費で英会話学校へ。週1回のレッスンを10年間継続した。独学も進め、TOEICスコアは835点まで伸ばした。

英語の知識を切り口にして
開発マネジメントの業務を獲得

最初のお客さま先で13年経過したところで担当営業からの提案もあり、他の製品分野も経験してみたいと考えて戦略的ローテーションを実施。自動車メーカー向けのECU(エンジン・コントロール・ユニット)を提供しているエレクトロニクスメーカーへ。ここでも評価業務を任されることになった。

「今回は、組み込み系の仕事に就くことができました。トラックやバスなどに搭載されるECUで、ブレーキを制御して坂道発進のアシストをするものです」

同じ評価業務でも、大きく環境は変わった。パソコンの中で作動するBIOSと異なり、組み込み系のECUでは、異なった部分のシビアさが要求される。

「極端な場合、バグが原因で暴走したら生命に関わります。ちょうどパンデミックの時期と重なったので、職場の検査機械を自宅からパソコンで操作するテレワークのセンスも要求されました」

ここでも伊吉さんの評価は高く、業務は4年間継続した。だが、同時に葛藤やジレンマも経験することになる。

「私も40歳になり、設計・開発を経験することなく評価業務一筋のキャリアを続けていいのかと考えました」

再度の戦略的ローテーション。これを方向付ける大きな要素となったのは、10年間学び続けた英語だった。世界的なネットワークを持つカーエレクトロニクスメーカーへ。設計・開発を飛び越える形で開発マネジメントの役割を与えられることになる。

多国籍企業、グローバル人材と
意思疎通しながら開発を進める

担当している業務は、車載する超音波センサーを使用したシステムの、ECU開発。駐車場にバックで入庫するときの障害物を検知し、さらにそれを応用して駐車枠の情報を送信する。今後数年以内の実車搭載を目標に開発業務が進む、そのスーパーバイジング業務に取り組む。

「特徴は、開発チームがベトナムにあり、エンジニアもベトナム人ということです」

遠く離れたところで働く開発チームとコミュニケーションをとる。また、エンドユーザーとなる自動車メーカーの開発部門にリサーチをし、その要望をベトナムにいるエンジニアに的確に伝える。

「例えば、現状のセンサーがセンシティブ過ぎて、地面にある水はけ用のふたまで障害物として認識してしまう場合、それが実使用に近い環境ではどの程度機能に影響するか、データを取るための試験を手配したり、取れたデータを基に、どのように機能仕様書などに落とし込むのかを検討したりします」

組み込み系の技術知識だけではなく、10年間学んだ英語の知識なしでは前に進めない環境。さらに、業務に向かうスタンスにもこれまでとは違う変化が求められている。

「評価業務では、リストアップされた要件を一つ一つ処理していけば事足りました。しかし現在は、より主体的な周囲への働きかけが求められています。エンドユーザーの要求、ベトナムの開発チームの見解。それぞれ単に伝達するのではなく、立ち止まって咀嚼してチームメンバーに的確な指示を出さなくてはなりません」

配属当初にお客さまから「考え方を変える」必要性を説かれ、厳しい言葉で指導され、落ち込んだこともある。だが、持ち前のポジティブさで、これもいい機会と受け入れることができた。今後数年間はこの仕事で成果を出したいという。

将来は?パンデミックの時期に、近親者が病気になり、医療技術の大変な進歩を実感した伊吉さん。医療機器分野で自分の力を試してみたい気持ちもある。技術とコミュニケーション力を両輪にステージアップを求める、伊吉さんのキャリアの広がりはいよいよ加速する。


※当社社内報「SYORYU」:2024年冬発刊号に掲載した記事です

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