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2009年8月 (社員向け)月例社長メッセージ

修羅場から逃げない心

昨今は、仏像ブームというものがあるらしく、東京国立博物館に展示されている興福寺・阿修羅像には、連日の行列だ そうです。その阿修羅さまが帝釈天さまと戦ったことを語源に、修羅場という言葉がありますが、私たちがその言葉を使うときには、単に生きるか死ぬかの闘争 の場というよりは、そこから逃げ出したくなってしまう場所という意味が含まれていると思います。その意味から、「修羅場を経験した数だけ人は成長する」と いうことが、昔からよく言われているのだと思います。そして、今のような世界経済危機の真っ只中に置かれている企業も、そこで働く人たちも、今まさにそれ ぞれの修羅場に直面しているのだと思います。ぎりぎりまでヒトもカネも削減され、それでも「納期は守れ」「アウトプットは落とすな、むしろ高くしろ」と要 求されている状況や、企業として、すでに雇用を守れなくなったりしている状況は、程度の違いはあっても、その状況に直面している人たちにとっては修羅場と 感じるのだと思います。

当社においては、エンジニアの皆さんもさることながら、現状をもっとも修羅場と感じているのは営業かもしれません。受注を待っているのではなく、自ら獲り に行く行為は、本来の営業の姿なのですが、長期にわたって待ちの状態が恒常化してしまうと、理屈では分かっていても、なかなか自分の意識と行動が転換でき ない人もいます。しかしながら、先般各エリアで行った、「危機脱出営業戦略会議」における全営業担当の誓約には、自らの意識と行動を変えるという強い意志 と意欲を感じました。期待したいと思います。あるいは、研修という状況も、さまざまな制約条件を乗り越えて、自分自身のモチベーションを維持しながら自分 にとって価値あるものとしてやり続けることは、ある意味、修羅場と言えるかもしれません。

修羅場に直面したときの人の行動は、二通りです。修羅場に真っ向から立ち向かうのか、逃げ出すのか、どちらかの選択を行うということです。だれでも、痛み や苦しみからは逃れたいと思うので、反射的に修羅場から逃げ出したいと思うことは、当然の人間心理とも言えます。ただし、ここで、逃げ出してしまいたいと いう気持ちをぐっと抑えて、踏みとどまることができるかどうかが、自分自身の成長の分かれ目となることを、私自身も数多く経験してきました。自分の経験か ら言っても、気持ちに負けて逃げてしまったときには、やはり後になって後悔することが多かったと思います。

1991年のバブル経済崩壊後の危機のときもそうでした。その危機から逃げないで、ともに支えあいながら乗り越えた仲間たちが、その後の当社の再生と成 長、発展を支えてくれました。また、そうした危機を会社として経験したからこそ、雇用を守りながら危機を乗り越えていくためには、まず自分たちの会社が強 くならなければならないという決意に基づいて、当時の約270億円の借金をすべて返済し、自己資金で経営できる財務基盤を構築してきました。だからこそ、 今次の危機は、それぞれが修羅場に直面しながらも、雇用を守りつつ危機を乗り越えていこうという取り組みを行っています。

修羅場を乗り越えたときにこそ、個人としての成長実感があります。同時に、個人の成長の集積が、その後の会社の成長の原動力になっていきます。修羅場から逃げない心を、皆さんと共有したいと思います。

以上

メイテックグループCEO
代表取締役社長 西本甲介