長い間、人類は陸・海・空、そして地下や宇宙まで、そこに存在する資源や環境、空間をどう活かすことができるか、あくなき探求心と好奇心をもって追求し、形にしてきました。
例えば、陸には、生活空間やインフラ、設備などを備え、海や空には航路を整備して、船舶や航空機で大陸間を縦横無尽に移動できるようになりました。すべては、人類が「安全に生きたい」、「速く走りたい」、「高く飛びたい」などの人間の能力の限界を超えた欲求を実現するために、長い年月を費やして叶えてきたことです。
そして今、世界各国ではベンチャー企業から大手企業に至るまで、次世代の移動手段に向けた「空の移動革命」への挑戦が始まっています。これは、携帯電話や自動車と同様に、「個人」という単位でいつでも手軽に活用したい、という欲求を実現する挑戦でもあると、私は捉えています。
国内では、経済産業省が国土交通省と合同で、「空飛ぶクルマ」の実現に向けたロードマップを作成し、2023年には事業を開始。2030年代から本格的に実用化を拡大する予定です。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに照準を合わせて、「空飛ぶクルマ」のデモンストレーション飛行を披露しようとする企業も出てきており、実現すれば日本の技術力をアピールする最高のチャンスになることでしょう。
このように注目を集めている「空飛ぶクルマ」ですが、現在各企業が開発中のタイプは、2つに大別されるようです。1つは、ヘリコプターの垂直離着陸などの機能をベースにしたドローン型で、基本的に地上走行しないもの。もう1つは、固定翼を持ち、地上走行と空中飛行の両方ができる駆動型のもの。技術的には、新しい技術を開発するというよりも、モビリティ分野、航空宇宙分野などの技術を融合・改良させながら、安全性を第一に、性能やサービスの面でどれだけ付加価値を付けられるかに、各企業が試行錯誤している状況だと言えます。
私が「空飛ぶクルマ」の実用化で期待している未来社会は、都市部で「空飛ぶクルマ」をいつでも利用できる環境というよりも、日本のどこにいても、急病や怪我などの救急搬送、物資輸送、移動手段の確保など、生活に不可欠なサービスを誰もが受けられる環境が整っている姿です。
「Engineering Firm at The Core」である私たちも、世の中の人々が豊かな人生を送るために何が必要かを愚直に探求し、革新的な「ものづくり」に挑戦していくことが、今求められています。
メイテックグループCEO
代表取締役社長 國分 秀世