人間には、目や耳、鼻、舌、皮膚といった器官があり、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)を活用して、さまざまな変化を感じることができます。ただ、どの程度の変化なのかは個人の感覚ですので、経験則として大まかに大小や高低などを感じるにすぎません。
「センシング技術」は、物理的な変化を人間で言う「神経系」の機能であるセンサーで計測し、定量的に捉えることができる技術です。そして、これからの「センシング技術」は、計測したデータを、人間で言う「脳」の機能であるAIなどで解析し、「何ができるのか」を考え自動的に行うシステムへと進化していきます。
例えば、災害や事故、犯罪の発生を防ぐための社会インフラや防犯対策に活用されるケースが増えていくでしょう。東京オリンピック、パラリンピックが開催される2020年には、訪日外国人の数が爆発的に増えることが予想されますので、すべての人にとって安心・安全な環境整備が急務です。
新たに開発される「次世代都市交通システム」では、自動走行システムや運行管理システムなどで、多くのセンサーとAIを融合した「センシング技術」が活用され、安定した高密度の車両運行や最適加減速による衝突回避、待ち時間ゼロの乗り換えが実現されようとしています。また、防犯対策においては、センサーやカメラによるモニタリング技術の発展に加え、AIベースの画像認識技術が導入されますので、一度で複数の人を認識できるようになり、不審者や迷子を瞬時に識別して追跡・確保することが容易になります。「知覚」機能を備えた「センシング技術」へと進化することで、想像を遥かに超えたスマート社会を実現していくことでしょう。
さて、技術の進化は、今までも無限の可能性を引き出して、社会にイノベーションを起こし、われわれの生活を豊かにしてきました。エンジニアの皆さんが今携わっている設計・開発の仕事も、今まで世の中になかった「モノ」「コト」を生み出すと思うと、とてもワクワクします。
私がエンジニアとしてメイテックに入社した当時は、まだ「モノ」の進化こそが豊かな生活につながっていく、という時代でしたので、新しい「モノ」を生み出すこと自体が目的になっていたような気がします。一方「モノ」が溢れている今の時代、エンジニアに最も必要なのは、「『モノ』『コト』を通して、世の中のどんな課題を解決できるかを考えること」ではないでしょうか。考えて、課題を解決するための「モノ」「コト」を想像し、テクノロジーで具体化することが、エンジニアに期待される価値です。
メイテックエンジニアがお客さまから要求されるレベルは、ますますハイエンドになっていきますが、ひるむことなく、前を向いて楽しめるエンジニアであってください。
メイテックグループCEO
代表取締役社長 國分 秀世