2019年9月6日~11日にドイツ ベルリンで開催された家電見本市「IFA(Internationale Funkausstellung:国際コンシューマ・エレクトロニクス展)」は、世界各国より約2,000社が出展し、来場者も245,000人を超えるなど、大盛況だったようです。IFAは、毎年1月にアメリカ・ラスベガスで開催される「CES(R)」と並び、世界を代表するコンシューマ・エレクトロニクスの見本市。今回は、新たに日本が最初のグローバル・イノベーション・パートナー国となり、日本のスタートアップ企業など20社が集まる「ジャパン・パビリオン」が開設されました。日本のイノベーションを欧州の方々に知ってもらえる貴重な機会になったようです。
さて、これまでにも「スマート家電は、日本よりも欧州の方が進化している」と言われてきましたが、本イベントでは、欧州メーカーの家電は「もはやコネクテッドであることが当たり前」という事実と、AIが家電のインターフェースとして、生活者にとってごく自然な存在になってきていることが、象徴されました。
近未来には、家電のみならず、われわれの生活の中にAIが溶け込んで、なんでもオートマティックな世界になると考えられています。現在のAIの特徴として、「機械学習」と「ディープラーニング」が挙げられますが、決められた分野や範囲の中で自ら学び、どんどん賢くなることはあっても、自らの意思で「これがやりたい!」と、まったく違う分野に学習を広げることはありません。しかし、将来的には人間の知能に迫り、幅広い知識と何らかの自意識を持つAIが実現する可能性はあります。その時に大切なことは、人間がAIを抑制できるかどうかです。
例えば、「モラルジレンマ(道徳的葛藤)」という問題が今の社会に広がりつつありますが、AIが進化すれば、人間同様AIの「モラルジレンマ」についても、危機感を持って取り組まなければなりません。ものづくりの世界においては、故障や誤作動は起きるものだという前提に立って、そのような場合に安全な方向に導く「フェイルセーフ」という基本設計思想があります。しかしながら、「モラルジレンマ」は誤作動ではなく、AIが正しいと判断して起きる問題であるため、新たな視点での監視制御システムを組み込まないと、事故を防ぐことはできないでしょう。
エンジニアの皆さんがこれからのスマート社会を見据えるなら、そこで活用されるさまざまなシステムや仕組みが、どう設計され成り立っているのかという全体像を、まず理解することから始めてほしいと思います。なぜならば、スマート化により家電や家、車、街すべてがつながり、切り離すことができないからです。そして、その中で見えてくる新たな問題に対し、われわれにしか提供できない価値を一緒に創造していきましょう。AIが寄り添う世界は、もうそこまで来ています。
メイテックグループCEO
代表取締役社長 國分 秀世