2021年11月 (社員向け)社長メッセージ
「本質を見抜く力」と「好奇心」
2021年のノーベル物理学賞は、「大気・海洋結合モデル」を開発した米プリンストン大学の真鍋淑郎上席研究員ら3人が受賞されました。真鍋氏は、1958年に渡米されてから気象研究に従事し、現在世界中で深刻な問題となっている地球温暖化や気候変動に、二酸化炭素(CO2)の濃度上昇が影響することを予測する物理モデルを開発しました。ノーベル物理学賞で「気象学」の分野が受賞するのは初めてのようですが、「人類に最大の貢献をもたらした」功績として分野の壁を超えて高く評価されたことは、非常に画期的ですばらしいことです。
私は、真鍋氏のインタビューや報道を見ていて、2つの重要なキーワードが心に残りました。それは「本質を見抜く力」と「好奇心」です。
まだコンピューターが貧弱だった時代に、地球の大気がどう変化するかを科学的に予測計算し、単純化したモデルの中でも本当に重要な特徴を見逃さなかった真鍋氏は、まさに「本質を見抜く力」の持ち主です。現在のスーパーコンピューターやAIを駆使した予測計算は、真鍋氏の計算モデルが礎だということですから、本当に驚きです。
そして、真鍋氏は長きにわたって研究できたモチベーションの原動力は、「好奇心」だとお話しされていました。ご本人の「好奇心」を満たす研究を愚直に続けてきたことで、世の中に大きなイノベーションを起こすことになったのです。われわれには想像もできないぐらい辛いことも数多あったでしょうが、「気候変動の研究を本当に楽しいと思ってやってきた」と語れるのはすごいと感じました。
社員の皆さんにも、この2つのキーワードは大事にしてもらいたい。特にエンジニアの皆さんは、世の中に新しい価値を生み出すために、日々試行錯誤し、仮説を検証・証明しているわけですから、物事の「本質を見抜く力」と、興味を持ち続けるための「好奇心」が重要だということはよく分かっていると思います。
地球の温暖化だけでなく、世界ではさまざまな解決すべき課題があり、それに取り組む国際目標としてSDGsが掲げられています。どうすれば2030年までに目の前の社会をより良いものにできるかを、まず一人一人が興味をもち、課題設定する。そして仕事を通じて自分の持てる力をフル活用して課題解決を目指す。われわれも、真鍋さんの研究への情熱を見習い、今の仕事に対する誇りと気概を持って、より良い社会の実現に向け取り組んでいきましょう。
代表取締役社長
國分 秀世